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開かれた社会とその敵? ~プラットフォーマーという妖艶な花

2020年4月19日

ちょうど昨年の今頃ですが、ZOZOTOWNからのアパレルメーカー撤退が話題になっていました。軌を一にして、Netflixからディズニーが撤退して「Disney+」を始めるというニュースもあり、いわゆるプラットフォーマー離れが進んでいる印象を与えました。今回は少し(今さらですが)このテーマを振り返りたいと思います。

アメリカのトイザらスが破産法適用申請したのは2017年9月でしたが、直接的な理由はAmazonでのおもちゃのネット販売に対抗できなくなったからです。トイザらスは当初アマゾンと玩具で独占供給契約を結んだわけですがあっさりその契約を無視して他のおもちゃメーカーの商品をAmazonが扱い始め、トイザらスは提訴の上、自社サイトを立ち上げましたが、結局Amazonの勢いには勝てずにそのまま沈没しました。ECノウハウが無いからといって安易にプラットフォーマーに乗っかると販売ノウハウや顧客ごと奪われてしまう典型的な事例と言えるでしょう。例えば日本でもセブンイレブンに商品を納めるのは一時的に売り上げが上がるかもしれませんが、「売れ筋」であることが分かればほぼ確実に PB商品を出されてより安く展開されるでしょうから、難しいところです(これはAmazonでも同じです)。

ここでの「ノウハウ」というのは、要するに顧客の購買データです。どの客が、どの商品をどういうタイミングで買っているのかというデータはプラットフォーマーにしか残りません。メーカー側にはSKUでの何が何個売れたかしか分からないのです。そしてプラットフォーマー側はそのデータを使ってよりよい品ぞろえを、より安い提供者を見つけて実現します。Netflixにしても、どの顧客がいつ、どんな映画を見て、どこで離脱したのかも全て把握できる状態で「自分の映画」を作っているわけですから、映画の配給会社からすれば「そりゃないよ」といったところでしょう(しかもアカデミー賞の候補にもなるわけです)。

そんな中、プラットフォーマー離れが加速するというのは当然の成り行きです。ZOZOTOWNが(「場」 を提供するプラットフォーマーにもかかわらず)自分でPB商品を出すなどというのは露骨にメーカーの反発を招きましたが、実質同じようなことはAmazonにせよNetflixにせよ、あるいはセブンイレブンにせよやっているのです。プラットフォームが勢いがあるうちは集客力も上がって「勝ち馬に乗っておくか」という判断になるのでしょうが、陰りが見えてくれば、タッグを組むインセンティブは小さくなっていきます。プラットフォーマー側としても、品揃えの多様さが魅力だとすれば、このあたりの駆け引きが肝になる部分なのでしょう。

集客力のないメーカーにとっては集客力のある「場」がなければどれだけ良い商品を作っても売ることができません。一方でブランドが確立してファンの多いメーカーであれば自社EC経由で直販した方が経営にとって有利になります(それを近年D2Cと言っています)。サイバー経済ではスマホを通じて顧客とメーカーはゼロ距離であり、ポイントは顧客にとって「存在するかしないか」、顧客にとって特別な「固有名詞」であるかでしょう。

残念ながらトイザらスは顧客にとってその地位を占めることができませんでした。プラットフォーマーは「開かれた存在」でありながら、出店者側にとって牙をむく「敵」となる食虫植物のような形態を取ります。一方で、虫そのものが寄ってこなくなっては生きていくこともできません。そのギリギリのところで妖艶な魅力を保ち続けることができるかどうか、プラットフォーマーの力量が試されていくといえるでしょう。

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