最近、経済調査を専門にしている友人に、今の日本の財政について話を聞く機会がありました。
- 政府債務の対GDP比が先進国中で圧倒的に高いのに大丈夫なのか?
- 日本にとっては円安がいいのか円高がいいのか?
- 最近のMMT理論はやはり不当な議論なのか?
- 先進国ではやはり格差は広がっているのか?
など、色々と質問を投げかけている中で、改めて数字を見て衝撃を受けたものがあります。
主要国の対外純資産のデータです(2018年末)。
財務省が出している「主要国の対外純資産」という表では、世界の中で日本の対外純資産が最も大きく341.5兆円となっています。2位はドイツの260.3兆円、3位は中国の236兆円です。この日本の対外純資産の多さが日本財政の支えの一つになっており、円への信任がなくなっても、いざとなったら民間部門(=銀行)でこれらの対外資産を売却して資金化し、国債の買い支えができる(国内の民間部門で消化できる)という理屈にもなります。要は「資産がない状態よりはマシ」なわけです。
さて、私が衝撃を受けたのはそこではありません。一方、対外債務が多い国、要するに他国から国内に投資を引き込んでいる国ということになりますが、断トツの1位は米国で、その額は実に▲1,077兆円に上ります。2位はフランスの▲34兆円であること、そして世界一の純資産国である日本が+341兆円であることを考えればいかに巨額の対外債務であるかがわかるでしょう。
基軸通貨たるドルの強さ。
この一言に尽きるわけですが、米国はこの「強いドル」施策によってドルを印刷するだけで対外投資を呼び込み、そして国内の発展へと結びつけることができています。グローバルな通貨発行権を持つというのが今の米国の立ち位置であり、勝ち組そのものということになります。「私に一国の通貨の発行権と管理権を与えよ。そうすれば、誰が法律を作ろうと、そんなことはどうでも良い。」というマイヤー・アムシェル・ロスチャイルドの言葉は有名ですが、まさにその現実をまざまざと見せつけられた気がしました。
日本でも長らく海外から投資を呼び込むような魅力ある国土開発ということが叫ばれてきましたが、ドルと円の格の違いは明らかです。折しも最近、IR(統合型リゾート)関連でラスベガスサンズのアデルソン会長が日本への進出断念を決めました。
金融の分野ではよく「too big to fail(大きすぎて潰せない)」という言葉が使われますが、米国債についても同様です。日本と中国が米国債の主な保有国ですが、97年に橋本龍太郎首相が米コロンビア大学での講演のあとの質疑応答で「米国債を売りたい衝動に駆られることがある」と冗談めいて発言しただけで「もし売るようなことがあれば(米国への)宣戦布告とみなすと脅された」と言われます。最近の米中貿易戦争でも「米国債売却」が最終カードとして中国が示唆するところで、ここは米国もセンシティブになるところでしょう。しかし日本にとっては「売りたいな」と思うことさえできない米国債の保有というのは何たることでしょうか。不良債権もよいところです。
米国のドルの強さを支えているのは当然ながら経済成長であり、その経済成長、GDP成長のもっとも根源的な要因は人口の増加です。米国は今なお人口が増加していますが、「移民の国」というアイデンティティがこの国の根本的な強さということでしょう。人口が単調な右肩下がりになっている日本とはわけが違いますし、この点一人っ子政策を続けてきた中国も大きな問題を抱えています。
とりとめのない話ではありますが、今回はデータをきちんと見ることは大切だなと改めて感じたということでした。対外純債務、▲1,077兆円!
※元データ: https://www.mof.go.jp/international_policy/reference/iip/2018_g3.pdf