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熱帯地方の都市化というパンドラの箱 ~感染症の歴史を考える

コロナウイルスの今後への示唆について、病原菌の広がり方から考えてみましょう。

以前、『銃・病原菌・鉄』という本が世界的に流行りましたが、人類の歴史にとってもともと病原菌は大きな影響を持つものでした。

人間の死因でいちばん多いのは病死である。そのため、病気が人類史の流れを決めた局面も多々ある。たとえば、第二次世界大戦までは、負傷して死亡する兵士よりも、戦場でかかった病気で死亡する兵士のほうが多かった。戦史は、偉大な将軍を褒めたたえているが、過去の戦争で勝利したのは、かならずしももっとも優れた将軍や武器を持った側ではなかった。過去の戦争において勝利できたのは、たちの悪い病原菌に対して免疫を持っていて、免疫のない相手側にその病気をうつすことができた側である。

ジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄』(上)、pp.290-291

ナイチンゲールの偉業の一つは、戦争に従軍した兵士の死因を集計した結果、戦闘で負った傷自体で亡くなるよりも、負傷後に何らかの菌に感染したせいで死亡する兵士の方が圧倒的に多いことを明らかにしたことでした。彼女はそのデータをもとに、「戦争で国民の命を失いたくなければ、清潔な病院を戦場に用意せよ」と政治家や軍人に迫りました。

ところで、ジャレド・ダイアモンドが指摘する様に、病原菌が人間社会で繁殖することができた最大の理由は、農業生産による都市化(人口密度の稠密化)と群居性の動物の家畜化でした。ともに多くの個体が密集するところに病原菌繁殖の条件が整うということです。

この観点から今回のコロナウイルスの事例を考えると、発祥地が中国の武漢である点に注目されます。武漢はウイルス研究所があるのも有名ですが、そもそもが亜熱帯の湖北省に位置します。夏季は多雨高湿、特に武漢は夏の暑さで有名で、「中国三大ボイラー」とも言われています(残り二つは重慶と南京)。今までの文明都市というのは、ほとんどのケースで寒冷地、北の国々に存在しています。欧州や北米はいわずもがな、東京についてもせいぜい温帯に存在しています。最近の大きな流れとして東南アジアやインドも含めて亜熱帯、熱帯の地域の発展が進んできたということがいえるでしょう。

そして生物多様性の観点から見た場合、まだ定見はないものの、ほとんどすべての生物で低緯度地域(熱帯)の方が、高緯度地域(寒帯、温帯)に比べて種数が多いことが知られています。とりあえずの事実としてこれを受け入れた場合、熱帯・亜熱帯地域の都市化とその地域のグローバルな接続は世界にとってパンドラの箱になる可能性もあるでしょう。深圳(広東省)にしても、もともと人口3万人の漁村がここ30~40年で人口1300万人にまで膨れ上がっています。暖かい気候による生物多様性、過密化する人口あるいは家畜化、そして多くの感染症が動物由来であることなどを考え合わせると、今後人類が直面する途上国の発展は、疫学的な観点から大きな課題を抱えるものになるかもしれません。

スペイン風邪はアメリカの米軍キャンプで発生し、第一世界大戦で欧州に派遣された兵士を介して、世界に広まったとされています。南米のインカ帝国やアステカ帝国が滅亡したのも直接的にはスペインが持ち込んだ天然痘の流行が原因でした。人間の移動は常に新しい病原菌の流行を引き起こしてきましたが、今回もまた「いつか来た道」なのでしょうか。途上国の発展とグローバルな接続、このテーマに私たちは立ち向かっていかなければなりません。

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