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北朝鮮問題 ~日本にとっての最悪シナリオを考える

2020年5月3日

俄かに北朝鮮・金正恩委員長の安否問題がホットな話題になっています。

今までも飛翔体発射を繰り返し、核開発を続ける北朝鮮。トランプ劇場の中でも1つの演者でありましたが、最近ではめっきり影を潜めていました。それがここにきて、突然の死亡説が登場し、世間を騒がせています(真実は不明です)。

日本にとって朝鮮半島の戦略的位置づけは重要です。よく「日本は万世一系の天皇家を有する世界でも稀にみる国体」といった表現がされますが、「万世一系の天皇家」が存続できた理由は端的に言って地政学上の2つの理由が大きいでしょう。

  1. 東アジアの覇権国家である中国が基本的に膨張主義的でなかった(華夷思想)
  2. 中国と日本の間に朝鮮半島が存在した

中国の華夷思想は、中国の優越を前提として、中国皇帝がその徳を周囲を照らしていくことになっています。ある意味でその徳次第で周囲の国がどれほど従うかというのも決まってくるわけで、武力で無理やり従わせようとはあまりしてきませんでした。ある意味で大学の教室のようなもので、教師の授業が面白ければ後ろの席まで皆、目を輝かせて話を聞くでしょうし、つまらなければ皆寝てしまうといったようなものです。徳が影響力の範囲を決めるという自制的な発想は日本の安全保障にとっては幸運でした。

また、朝鮮半島という緩衝地帯の存在が決定的に重要です。朝鮮半島は大陸に接続しており、常に大陸中心部の強力な国家に怯え、にもかかわらず基本的に独立を維持しています。そして中国が日本に攻め込むためには、その前提として朝鮮半島を先に征服することが前提となります。この朝鮮半島に強い国家が存在したということもまた、日本の安全保障にとっては重要な意味を持ってきました(現実に、朝鮮半島が征服された元の時代には元寇という形で2回、日本も中国に攻められています)。

さて、今の朝鮮半島は38度線を境に南北に分かれていますが、北朝鮮有事の場合、日本にとっての最悪シナリオは何でしょうか。

出典:Wikipedia

韓国の文在寅政権にとって、朝鮮半島の統一は悲願です。また、北朝鮮の核をそのままに核保有国になること、そして北朝鮮の労働力を使って輸出競争力を高めていくことも念頭にあるでしょう(東西ドイツの統一のように、韓国が北朝鮮の経済を支えるための負担を負うことは今の韓国にはできないでしょう)。

また韓国が手を出せなくても、中国が傀儡政権を樹立することも考えられます。少なくとも米国は東アジアにおける軍事的な負担を減らそうとしてきましたし、足元のコロナで軍事的なオペレーションが混乱している現在、機動的な動きは取りづらいと思われます。そうすると38度線で在韓米軍と直接対峙ということになりますが、朝鮮戦争を機に置かれた米軍の存在意義が変化してしまう可能性があります。

ここでの日本における最悪シナリオは、要するに在韓米軍の撤退に伴う、沖縄の最前線化ということになるでしょう。

足元で米軍はグアムから戦略爆撃機を撤退させています。これは今まで北朝鮮への抑止として置かれてきたものですが、防衛線をハワイまでと考えたのかもしれません。それでは在日米軍はどうなるのか?

米軍の東アジアからの撤退に伴う権力の真空化に伴い、中国が勢いを伸ばすことは当然としなければいけません。降って湧いた金正恩委員長の健康問題ですが、こういった安全保障の微妙なバランスの問題に直面しているということを考えさせられるものでした。

日本は自国の安全保障をどうしていくべきなのか?当然、これもまた国民が自分で考えなければいけません。

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